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よんじゅうはちにんめ

四十八人目

森田 草平

線上閱讀森田 草平《四十八人目(よんじゅうはちにんめ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 56,183 字 · 112 頁

青空文庫

と言いおいたままふたたび出て行った。

その後で、勘平と小平太とはしばらく顔を突合せていた。小平太には、何よりもこうして同志の者と向い合って、落着かぬのに落着いた顔をしているのが辛かった。時刻は一分刻みに刻々と移って行く。いっそ早く定めの刻限が来てくれたらとも思ってみた。そうしたら、この苦しみから免れられるかもしれない。その刻限が来るのは恐ろしい。しかしそれを待っているのはいっそう怖ろしい! そんなことを考えているうちに、勘平は何と思ったのか、小平太に向って、

「おい、今日はどうして出かけないのだ?」と言いだした。「俺はこちらに縁辺もなし、訪ねてやる知人とてもない。ま、留守は俺がしているから、今夜が最後だ、何方へなりとも行ってこられい」

小平太はその言葉に救われたような気がした。で、考える間もなく、

「そうか。では、気の毒じゃが、何分頼むよ」と言ったまま、そわそわと宿を出てしまった。

が、出るには出ても、小平太には別段どこへ行く宛もなかった。おしおとはもう昨日の朝「二度とは会わんぞ!」と言いおいて別れてきた。それに、あの女と交した約束も果さないで、今さら逢いに行かれるものでない。