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よつや、あかさか

四谷、赤坂

宮島 資夫

線上閱讀宮島 資夫《四谷、赤坂(よつや、あかさか)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 8,947 字 · 18 頁

青空文庫

私は遂に泣き出した。

『もうじきだよ坊ちゃん、もうじき滝だ』

車夫が背中をゆすってくれた。そうしてやっと滝についた。竜の口や、蝦蟆の口から出る滝壺は暗かったが池には大きな鯉がいた。茶店が二、三軒並んでいるだけで、池のまわりは薄暗い森だった。十二社も寂しかった。

帰りにはまた長い矢来に添うて歩いた。その矢来の中が、今の浄水場になったのである。

原っぱを眼先に控えている踏み切りの手前の寂しさも、大方想像のつく所である。

が然し、今日では、布袋屋、三越の建物が、素晴らしい勢いで聳えている。小さな建物は、片っ端から壊される。そのあとには、段々高い建物が建って行く。武蔵屋、三越が近くまた、一層どえらい奴を建てる計画になっているそうである。何とか座という芝居も出来るし、武蔵野館は踏み切り向うに引越しても、なお圧倒的封切によって、シネマ・ファンを吸収するに違いない。中村屋の店頭にはいつも暮の売出しのように人がたかっている。売れ高、東京随一の実利的名声は、遂に黒光女史の名声までを圧してしまった。それにしてもあの裏の洋館はどうなったか。ワシリー・エロシェンコがさびしそうにぽつねんと住んでいた。