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もぐらとらくばん

土鼠と落盤

黒島 伝治

線上閱讀黒島 伝治《土鼠と落盤(もぐらとらくばん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 17,823 字 · 36 頁

青空文庫

あとから女達が闇の中を早足に追いついて来た。暫らく、市三の脇から鉱車を押す手ごをしたが、やがて、左側の支坑へそれてしまった。

竪坑の電球が、茶色に薄ぼんやりと、向うに見えた。そして、四五人の人声が伝って来た。

「誰れだい、たったこれっぽちしか入れてねえんは。」市三が、さきに押して来てあった鉱車を指さして、役員の阿見が、まつ毛の濃い奥目で、そこら中を睨めまわしていた。「いくら少ないとてケージは、やっぱし一ツ分占領するんだぞ。」

ほかの者は、互いに顔を見合っていた。市三は、さきの鉱車よりも、もっと這入り方が少ない今度のやつを役員の眼前にさらすのは、罪をあばかれるように辛かった。鉱車ごと、あとへ引っかえしたかった。しかし、うしろからは、導火線に点火し終った井村がカンテラをさげ、早足に、しかもゆったりとやって来た。――そのカンテラがチラ/\見えた。それは、途中で、支坑へそれた。

市三は、ケージから四五間も手前で鉱車を止めた。そして、きまり悪るげにおど/\していた。

「あンちき生、課長や、山長さんにゃおべっかばっかしこけやがって!」

阿見がケージをたゞ一人で占領して上へあがると、びっこの爺さんが笑い出した。