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ちきゅうをねらうもの
地球を狙う者
海野 十三
線上閱讀海野 十三《地球を狙う者(ちきゅうをねらうもの)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 14,493 字 · 30 頁
「いやどうも。それは相済まぬことで。その訳といいますのが――」といったところでボーイは、急に言葉をとめ舷側越しに桟橋を指さし、「ああ、その訳なるものが、ただいまあれに現われました。ほら、いまブリッジをこちらにのぼってまいります」
と、ボーイは、なにやらにやにやといやらしい笑い顔をつくった。
「なに、ブリッジを――」と、僕は身体をくねらせて、ブリッジの方を見た。そして口の中で、おおと叫んだ。
父娘でもあろうか――と、始めはそうおもった。もう六十ぢかい太った老紳士の腕を、その横からピンク色の洋装のうつくしく身についた若い女が支えて、ブリッジをのぼってくる。
その老紳士は、どこかで見たおぼえのある顔だった。しかし、僕は、それを思いだすかわりに注意力を、その脇にいる若い女性の方にうばわれていた。
(すばらしい女だ)
東京湾を出てからこの方、銀座通りもない海上をこうして小笠原列島の南端にちかい父島までやって来たことだから、若い女なら一応誰でも美人に見えるはずであったが、そんな割引をしないでも、たしかにかの女は美しかった。
「誰だい、あの遅刻組は」
僕は、その女から眼をはなさないままでボーイにたずねた。