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じしんなまず
地震なまず
武者 金吉
線上閱讀武者 金吉《地震なまず(じしんなまず)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 98,954 字 · 195 頁
おなおりになってからでもよいではありませんかといったが、五分間でもよいから口授を許してくれといって、「本邦大地震大観」の中の関東地震の部分を筆者に書きとらせた。
寒い冬だったが、病室に暖炉はおろか火鉢さえなかったのである。
十二月三十日に辛うじて床の上に起き上がって人に助けられつつ喜んでソバを食べたのが一生の食べ納めとなった。かくて昭和二十三年元旦の払暁、先生の悪戦苦闘の生涯は終わりを告げた。先生と親交のあった豊竹呂昇の末路と同じく淋しい最期であった。行年七十八歳。
呪うべきは戦争である。かの戦争がなかったら先生はまだ死ぬ人ではなかったと思われる。
昭和十一年に癌の疑いがあってくわしい検査を受けた時、医師は言った。あなたの生理的年齢は五十代であると、その時先生は六十六歳であった。田中館愛橘先生もつねづね俺の長寿の跡継ぎは今村だといっていたそうである。
あの戦争さえなかったならば、先生は恩給で安楽に余生を送ることが出来たであろう。多年の宿願であった南海道地震の前徴も首尾よく捕捉されて地震予知の上に一大貢献をなされたであろう。無理な労働をするにも及ばなかったであろう。