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こうふ
坑夫
線上閱讀夏目 漱石《坑夫(こうふ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 141,690 字 · 283 頁
もっとも自分はただ煩悶して、ただ駆落をしたまでで、詩とか美文とか云うものを、あんまり読んだ事がないから、自分の境遇の苦しさ悲しさを一部の小説と見立てて、それから自分でこの小説の中を縦横に飛び廻って、大いに苦しがったりまた大いに悲しがったりして、そうして同時に自分の惨状を局外から自分と観察して、どうも詩的だなどと感心するほどなませた考えは少しもなかった。自分が自分の駆落に不相当なありがたみをつけたと云うのは、自分の不経験からして、さほど大袈裟に考えないでも済む事を、さも仰山に買い被って、独りでどぎまぎしていた事実を指すのである。しかるにこのどぎまぎが赤毛布に逢い、小僧に逢って、両人の平然たる態度を見ると共に、いつの間にやら薄らいだのは、やっぱり経験の賜である。白状すると当時の赤毛布でも当時の小僧でも、当時の自分よりよっぽど偉かったようだ。
こう手もなく赤毛布がかかる。小僧がかかる。そう云う自分も、たわいもなく攻め落された事実を綜合して考えて見ると、なるほど長蔵さんの商売も、満更待ち草臥の骨折損になる訳でもなかった。坑夫になれますよ、はあ、なれますか、じゃなりましょうと二つ返事で承知する馬鹿は、天下広しといえども、尻端折で夜逃をした自分くらいと思っていた。