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うずもれたそうせきでんきしりょう

埋もれた漱石伝記資料

寺田 寅彦

線上閱讀寺田 寅彦《埋もれた漱石伝記資料(うずもれたそうせきでんきしりょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 3,234 字 · 7 頁

青空文庫

ところが、その後間もなく自分は胃潰瘍にかかって職を休んで引籠ってしまったので、教室の自分の部屋は全くそのままに塵埃のつもるに任せて永い間放置されていた。そこへ大正十二年の大震災が襲って来て教室の建物は大破し、崩壊は免れたが今後の地震には危険だという状態になったので、自分の病気が全快して出勤するようになったときは、もう元の部屋にははいらず、別棟の木造平屋建の他教室の一室に仮り住いをすることになった。その時でもまだ元の教室の部屋は大体昔のままに物置のような形で保存され黴とほこりと蜘蛛の囲の支配に任せてあったので従ってこのS先生の手紙もずっとそのままに抽出しの中に永い眠りをつづけていた訳である。

その後自分の生活には色々急激な変化が起こった。関東震災のおかげで大学に地震研究所が設立されると同時に自分は学部との縁を切って研究所員に転じ、しばらくの間は工学部のある教室のバラックの仮事務所に出入りしていて、研究所の本建築が出来上がると同時にその方に引越した。こうして転々と居所を変えている間にどうしたことか、元の部屋の机の抽出しの事をすっかり忘れてしまっていたのである。