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ぼちてんぼうてい
墓地展望亭
久生 十蘭
線上閱讀久生 十蘭《墓地展望亭(ぼちてんぼうてい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 46,485 字 · 93 頁
これで、もう、思い残すことはなかった。明るい太陽の光が、心の隅々まで射しかけ、歌いだしたいような快活な気持になった。
そして、これを、自分にくれたわけは?……竜太郎には、その意味がはっきりとわかっていた。
(それで、いいのだ)
竜太郎が、たずねた。
「……つまり、これを持って、あきらめて帰ってくれとおっしゃるんだね」
ヤロスラフは、答えなかった。眼に見えぬほど、その頬が、紅潮した。
竜太郎はつづけた。
「よくわかりました。僕は今晩マナイールを発ちます。……王女の御厚意は終生忘れませんと言っていたと、お伝えしてください。御幸福を祈っていますと……」
ヤロスラフ少年が、いった。
「お送りします。自動車が、もう、参っております」
竜太郎は、頭をさげた。
十三
嶢※たる岩山に沿った泥濘の道を、自動車は、どこまでも走って行く。夜は暗く、深かった。宵のうちに、ちらと月影がさしたが、間もなく、また暗澹たる黒雲におおわれてしまった。ただ見る赭土の丘と、岩とわずかばかりの泥楊だけの、荒涼たる風景だった。風が吹いているとみえ、楊がゆるやかに体をゆすっていた。
どこへ連れてゆかれるのか、竜太郎は、まるっきり知らなかった。