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よるのくつ
夜の靴
横光 利一
線上閱讀横光 利一《夜の靴(よるのくつ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 107,056 字 · 213 頁
清江はぼろぼろに歪んだ編笠の破れ目に青笹の葉をあて、繕いながら、
「まだ指さきがしびれての。真直ぐにのびないんだよ。こんなだ、ほら。」
炉の方へ足を向けて寝ていた清江の末の子が、薪の火の舌が廻って来るたびに、眠っていてもぴりぴり足を縮めている。上機嫌のこんな一家の夜は近来ない。思わず私もその炉の傍で夜ふかしする。
十月――日
降ったりやんだりしている天気だ。風も出て来た。およそこれほど悪天の続くところはあるものだろうか。ほんの二三分間密雲が破れて日が照ったかと思うと、また雨になり風になる。激しい変化ながら、海の方にある山が次第に明るみを加えて来た。
「こんな雨の多い秋はないもんだのう。」と久左衛門は来て云う。
顔を雨に濡らした子供たちは、山の樹に絡まったあけびの実を懐いっぱい詰め込んで来て、ごろごろッと炉の傍へ投げ出した。そして、味噌を中につめ、油を皮に塗って火で焼いて、うめいぞ、これはという。どこの農家も人が出払っている留守の炉に、火だけは燃えている。猫が背を丸めた閑散な午後になったと思っていると、また強くなった風に木の葉が飛び廻り、色づき始めた柿の実が葉の吹っ切れた枝から、目立って顕れて来る。