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やこうちゅう

夜光虫

織田 作之助

線上閱讀織田 作之助《夜光虫(やこうちゅう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 66,871 字 · 134 頁

青空文庫

「その手のものをお出し!」

お加代は、札束を鷲掴みにした娘の骨だらけの手を鋭く見た。

「う、う、う、……」

「お出しといったら、お出し」

「…………」

「黙ってちゃ埓が明かないわよ」

「何を、唖じゃあるまいし……」

「う、う、う、……」

「じれったいわね。出さなきゃ、ふんだくるわよ」

お加代はいきなり相手の手を掴んだ。

その時、一つの影がすっと鴈治郎横丁へはいって来た。

「う、う、う、あッ、あッ、あッ……」

唖の娘はお加代に手を捩じられて、鳥のような奇声を出した。

「何さ、変な声を出して……」

そう言いながら、お加代は娘の手から札束を掴み取ったが、薄暗がりですかしてみると、十円札は一枚しかなく、あとは五十銭札と一円札ばかり、全部で三十円にも足りなかった。

「なんだ。これっぽっちか」

お加代はぺっと唾を吐いた途端に、

「あ、これは豹吉の癖だったっけ」

と、にわかに豹吉のことを想い出した。

「――豹吉はどこにいるかしら。亀公が探していたっけ」

いや、探していたのは、亀吉だけではない。お加代もひそかに豹吉の居所を探していたのだ。――会いたかったのだ。

昼間、ハナヤで別れたきりの豹吉に、もう無性に会いたくて仕様がない。