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やしゃがいけ

夜叉ヶ池

泉 鏡花

線上閱讀泉 鏡花《夜叉ヶ池(やしゃがいけ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 27,689 字 · 56 頁

青空文庫

姫様は、それ、御縁者、白山の剣ヶ峰千蛇ヶ池の若旦那にあこがれて、恋し、恋しと、そればかり思詰めてましますもの、人間の旱なんぞ構っている暇があるものかッてい。

蟹五郎 神通広大――俺をはじめ考えるぞ。さまで思悩んでおいでなさらず、両袖で飜然と飛んで、疾く剣ヶ峰へおいでなさるが可いではないか。

鯉七 そこだの、姫様が座をお移し遊ばすと、それ、たちどころに可恐しい大津波が起って、この村里は、人も、馬も、水の底へ沈んでしまう……

蟹五郎 何が、何が、第一俺が住居も広うなる……村が泥沼になるを、何が遠慮だ。勧めろ、勧めろ。

鯉七 忘れたか、鐘がここにある。……御先祖以来、人間との堅い約束、夜昼三度、打つ鐘を、彼奴等が忘れぬ中は、村は滅びぬ天地の誓盟。姫様にも随意にならぬ。さればこそ、御鬱懐、その御ふびんさ、おいとしさを忘れたの。

蟹五郎 南無三宝、堂の下で誓を忘れて、鐘の影を踏もうとした。が、山も田圃も晃々とした月夜だ。まだまだしめった灰も降らぬとなると、俺も沢を出て、山の池、御殿の長屋へ行かずばなるまい。同道を頼むぞ、鯉。

鯉七 むむ、その儀は、ぱくりと合点んだ。かわりにはの、道が寂しい……里へは、きこう同道せい。