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だいぼさつとうげ
大菩薩峠
中里 介山
線上閱讀中里 介山《大菩薩峠(だいぼさつとうげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 145,722 字 · 286 頁
お雪は慰め顔に言いましたが、竜之助が何とも返事をしませんから、なんだか気の毒になって、
「ねえ、先生、わたしが今、何をしているか御存じ?」
「知りません」
「それでも当ててごらんなさい」
「歌を作っているのでしょう」
「いいえ」
「それではお裁縫?」
「いいえ」
「わからない」
「あのね……お人形さんに着物を拵えて上げているところなのよ、さっき、梅の間の戸棚をあけて見ますと、この衣裳人形がありましたから、有合わせの切れを集めて、こんなに拵えました」
竜之助は、それを聞いて驚いてしまいました。この娘は自分の周囲に、今、どんな人間がいて、その立場がどうであるかということはいっこう念頭になく、深山の奥で、近づく限りの人を友とし、知り得る限りのことを学び、愛すべきものを愛し、弄ぶべきものを弄ぼうとして、恐るることを知らない。
この間、池田良斎は、お雪ちゃんの持って来た万葉集を見てこういいました。
「ああ、これは寛永二十年の活字本で珍しいものだ、今日の万葉集はすべてこれを底本にしているが、普通には千蔭の略解本が用いられている、よほど好書家でないとこれを持っていない」
そうして、北原賢次とお雪ちゃんのために、日本の活字の来歴を一通り話したことでありました。