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だいぼさつとうげ
大菩薩峠
中里 介山
線上閱讀中里 介山《大菩薩峠(だいぼさつとうげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 159,272 字 · 313 頁
青貝の長柄の槍が現われて馬のさんずを突く。それが消えると、また朦朧とした黒い物影が、行きつとまりつする。
興に駆られた米友は槍を下におくと、手頃の石を拾い取って、力を罩めて靄の中へ投げ込んでみました。
それに驚いて、楊柳の蔭から一散に飛び出して、河原を横一文字に走るものがある。
犬だろう、と米友が思いました。
一匹が走ると、続いて思いもかけぬところからまた一匹、また一匹。
その物が唸る――犬ではない。
と米友は心得面に杖槍を拾い上げたが、その犬に似た真黒いものの影は、靄の中に消えて、唸り声だけが尾を引いて物凄い。
狼だ――犬の形をして犬でない。犬の棲むべからざるところに棲むのは狼だ。
この辺には狼がいる。飯山の正受老人は、群狼の中で坐禅をしたということを米友は知らないが、これは油断がならない。見廻せば前後茫々たる川中島。
ああ、上杉謙信ではないが、自分はあまり深入りをした。道庵先生の身の上が気にかかる。
道庵の身の上こころもとなしと戻って見れば、道庵は狼にも食われず、無事に莚の上に熟睡していますから、米友も安心しました。
酔うて沙上に臥するというのは道庵に於て、今に始まったことではない。