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だいぼさつとうげ

大菩薩峠

中里 介山

線上閱讀中里 介山《大菩薩峠(だいぼさつとうげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 159,272 字 · 313 頁

青空文庫

時々起るその合唱をほかにしては、森としたもので、空気全体がどこの温泉場も同じように、温かでしっとりしている。その時また、だしぬけに、

天文二十三年秋八月

越後国春日山の城主

上杉入道謙信は

八千余騎を引率して

川中島に出陣あり

そのとき謙信申さるるやう

加賀越前は父の仇

これをほふりてその後に

旗を都に押立てて

覇を中原に唱へんこと

かねての覚悟なりしかど

かの村上が余儀なき恃み

武士の面目もだし兼ね……

悲調を帯びたりんりんたる節が聞えたかと思うと、ぴったり止む。

あれは何だ。詩ではない。浄瑠璃でもない。相生町の屋敷でよく聞いた琵琶の歌に似て、悲壮にして、なお哀哀たる余韻の残るものがある。

その歌の一節が急遽にして起り、急遽にして止む。

拭い終った刀を鞘に納めると、外の通りが騒がしい。

「何だ、何だ、どうしたんだエ、火事でも起ったのかエ」

「火事じゃない、迷子だ」

「迷子か」

今までのは忽ちにして起り、忽ちにして消えても、それは音律に協った音調。今度のは市人が路傍でガヤガヤと騒ぎ出したのです。

「迷子かい」

「迷子ですとさ」

家並の人が戸を押しあけて、通りへ飛び出して罵る。その中で、