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だいぼさつとうげ
大菩薩峠
中里 介山
線上閱讀中里 介山《大菩薩峠(だいぼさつとうげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 159,272 字 · 313 頁
峠の町から軽井沢までは僅か十八町、且つ下り一方の帰り駕籠ですから、かつぐ方もいい心持、乗る方は一層いい心持になって、大鼾で寝込んでいるものですから、またたくまに軽井沢の宿の入口、桝形の茶屋まで着いても、まだ目が醒めません。
ここで、雲助はこの拾い物のお客をおろすと、宿の客引と、飯盛女が、群がり来って袖をひっぱること、金魚の餌を争うが如し。道庵、眼をさまして、はじめて驚き、
「しまった!」
酔眼朦朧として四方を見廻したけれども、もう遅い。
「お泊りなさんし、丁字屋でございます」
「江戸屋でございます」
「手前は佐忠で……」
「三度屋はこちらでございます」
「温かい御飯の冷えたのもございます、名物の二八蕎麦ののびたのもございます、休んでおいでなさいませ」
道庵、いかに、ジタバタしても、もう動きが取れません。
よし、こうなる以上は、この茶屋へも話しておき、どこぞしかるべき宿へみこしを据えてから、人を走らせて米友を招くに如かじ、と決心しました。その途端に、
「ねえ、旅のお先生、わたしどもへお泊りなさんし、玉屋でございます」
あだっぽい飯盛女が、早くも道庵の荷物に手をかけたものですから、道庵も鷹揚にうなずいて、その案内で桝形の木戸から、軽井沢の宿へ入り込んだものです。