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だいぼさつとうげ
大菩薩峠
中里 介山
線上閱讀中里 介山《大菩薩峠(だいぼさつとうげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 86,467 字 · 168 頁
今度のは東亜細亜特有の小動物ではない、まさしく、日本の国の或る地方の作りなまりを持った人間の声が、自分の仕草を見届けた上に、一種の威圧を以て頭から一喝して来たものだから、のろま清次はほんとうに驚いてしまい、ヘタヘタと腰を抜かしたけれど、その抜かした腰のままで、いざりが夕立に遭ったように河原の真中へ逃げ出してしまいました。
紙屑買ののろま清次が、一たまりもなく逃げ出した後で、その置きっ放しのカンテラを取り上げて、
「ザマあ見やがれ」
苦笑いしながら、現場を一通り照らして見ている男。これが、さきほどまで捨小舟の中で、うたた寝をしていたがんりきの百蔵でありました。
それにしてもたった今、うしろからかけたおどしの一喝、
「わっ! 貴様、そこに何しとる」
何しとるというような訛りは、甲州入墨で江戸ッ子をもって任ずるがんりきの地声ではない、特におどしを利かす場合のお国訛りに相違ないでしょう。
「のろま!」
がんりきはカンテラを持ち上げて、清次が逃げて行った方を冷笑気分に見廻し、
「ぼろっ買い! だが、のろまがのろまでねえ証拠には、ぼろっ買い、とうとう味を占めやがった、抜け目のねえのろまめ! 消えてなくなりゃあがれ、うふふ」