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だいぼさつとうげ

大菩薩峠

中里 介山

線上閱讀中里 介山《大菩薩峠(だいぼさつとうげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 254,021 字 · 495 頁

青空文庫

「左様なものにはあらず」

と。そこで二人の旅行家が押返して、

「然らばいかなるものぞ」

と、つきつめてみると、右の若い男の返事に曰く、

「犬の如くにして少し大なり」

ここで、やや恰好がついて来たものだから、

「せい高く、口大なりや」

とたずねると、

「そのごとし」

という返事。

「さては狼にあらずや」

と言うに、

「狼ともいふと聞く」

という返事――これでようやく鬼の正体がわかってきた。この辺では、狼の一名を鬼というのではない、鬼の別名がすなわち狼であるということが、二人の旅行家にわかりました。

「殊に人を取食ふものゆゑに、此あたりにては、狼を鬼といふなるべし、古風なることなり、程過ぎて今に至れば、をかしき物語ともなりぬれど、其時の物あんじ、筆の及ぶ所にあらず――」

鬼は寓話の世界に棲むが、狼は現実の里に出没して、たしかに人を食ったのである。怖るべきこと寧ろ、鬼以上である。

ここに鬼について、また一説があります。

オニという日本の古語は、隠れたるモノの意味で、仮りにその隠(オン)という字を当てはめてみたそれがオニに転訛し、鬼という漢字を当てはめることになったのである。角を生やしたり、虎の皮の褌をさせたりすることは、ずっと後世のことで、ただ隠れたるモノが即ち鬼である。