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だいぼさつとうげ
大菩薩峠
中里 介山
線上閱讀中里 介山《大菩薩峠(だいぼさつとうげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 254,021 字 · 495 頁
それのみか、ああいったような事情やむを得ず、この小舟を無断借用した、それをもちゃあんと先刻心得ている。なにもかも心得ていながら、黙っている、なんとなく解せない浪人だ、という感じを米友がようやく深くしました。
さて、右の浪人は、一切をとり纏めて立ち上ったが、その立ち上って二三歩あるき出した形を見て米友が、思わずまた頭をひねったのは、実は今まで、この人が座を構えて、釣を試みている形ばっかりを見ていたのだが、こうして歩き出したところを見ると、どうも、別に、たしかにどこかで立ち姿を見た覚えがある。たしかに覚えがあるが、今それがちょっと思い出せねえ。
米友としては、この変な人がどこへ帰るのだか、それは一向にわからないが、どのみち、あとへ戻れば湖の中へ入ってしまうのだから、畢竟、長浜の町の方へ帰るものに相違ない。自分としては、さし当りどこへという当てはないようなものだが、まだ、このまま胆吹へ引上げる気にはなっていない。それというのは、昨晩自分が胆吹から飛び出して来た目的というものが、まだ全く果されていないからだ。その目的というのは、例のセント・エルモの火に送られて、たしかにこの長浜の町へ入り込んでいる怪物。