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だいぼさつとうげ

大菩薩峠

中里 介山

線上閱讀中里 介山《大菩薩峠(だいぼさつとうげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 178,374 字 · 345 頁

青空文庫

七十六

さて、江戸の方面に於ける軟派、鐚は鐚で、このごろ少し憂鬱になっている。

鐚としては、せっかくのヒットたる芸娼院の方も、開店休業の姿だから、なんとかせねばなるまいが、いやはや、手をつけてみると、そのややこしいこと、それで少々気を腐らせているという次第です。

芸娼の芸娼たる所以のものを説いて聞かせても、世間はなかなかわかってくれない。とりあえず鐚の方へ持ちこまれた苦情のうちの一つに――

いやしくも芸と名のつく以上、ナゼ役者を入れない、芸人の王たる役者を入れないとはなにごとだ――と力んで来た!

それから、芸事の芸事たるめききというものは、その道のものがしなければならない、金茶や木口の輩が、御右筆の下っぱのおっちょこちょいを相手に、人選をするとは怪しからん。

と言って、膝詰めで来たものもあれば、ビタちゃんのお袖にすがって、ぜっぴ、お刺身のツマになりともありつきたい、と歎願に及んで来た奴もある。

その辺は、ビタちゃんだって心得たものなんだが、何を言うにもそれ、役者の方から言ってみるてえと、愚左衛門を入れれば、轟四郎が納まらないし、毒五郎をのけて戸団次に戸惑いをさせるわけにもいかねえ、そうなるとまた、土右衛門や貉之助の方のひいきが承知しない。