輕讀日語

輕鬆讀懂日語經典作品

ja-reading.com

輕鬆讀懂日語,輕鬆閱讀日語。線上閱讀日語經典作品。支援在閱讀過程中顯示假名、查詢生詞、翻譯句子。

だいぼさつとうげ

大菩薩峠

中里 介山

線上閱讀中里 介山《大菩薩峠(だいぼさつとうげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 104,838 字 · 204 頁

青空文庫

むしろ歌ってもらいたいものだというような物足らなさが、駒井の胸にも、お松の胸にも、ひとしく湧き上ることを如何とも致しかねました。

ですけれども、茂太郎の歌は、決して聞えませんでした。

「よく寝れば、寝るとて親は子を思い」――お松は、そういったような一種の親心同様な思いに駆られて――船長室を立ち出で、

「茂ちゃあーん」

と呼んでみようとしたが、おとなしくやすんでいるものを起さないがよいとも思案しました。なまじい呼びかけて、またあの子の即興心をまで呼びさまし、はしゃぎ出されたのではたまらない。

港へ入ったという安心で、あの子もぐっすり寝込んでいるだろう、明日まではそうして置くがよいと、お松は思案して、自分の部屋へ引返しましたけれど、茂太郎の歌わないことが、いよいよ我が身を滅入らせるような思いをしないではありません。

こうして、入船の当夜は、特に静粛なるべき船長の思慮と命令がよく行われて、物音らしい物音、人声らしい人声は船内から一つも外へ洩れないで、ほとんど無事にその夜が明け放れんとする時分に、船長の思慮と威令とが、遺憾なく蹂躙された一大衝動を捲き起したというのは、本意ないことであります。