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だいぼさつとうげ
大菩薩峠10
中里 介山
線上閱讀中里 介山《大菩薩峠10(だいぼさつとうげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 285,635 字 · 558 頁
「弁信さん、弁信さん、さっき、お前が、しきりにあたしを呼ぶものだから、あたしはこうして飛び出して来たんだぜ、あの赤い空の上に、不意にお前の姿が現われたじゃないの……だから、こうして、ここまで走って来ちゃったのよ。ここまで走ってくると、お前はもういないし、日もくれちまったじゃないの。これからあたしは、どうすればいいの」
耳を傾けても、波の音ばかりで、返事をする声が聞えないのに、
「さあ、どうしたらいいの、ここは海で、これより先は行けないじゃないの、これから、どっちへ行けば、あたしはお前に逢われるの?」
茂太郎の耳には、やはり弁信の呼びかける声が聞えて、その返事を待つもののようです。
海の表に向って、耳をすましていたが、やはり人間の声はどこにも聞えない。
「お腹がすいちゃった」
茂太郎は、クルリと向き直って、陸の方を見直しました。
洲崎の番所では蒸したてのジャガタラ芋の湯気を吹き吹きお相伴になれようものを、ここまで来てしまっては、今の夕飯が覚束ないのみでなく、今晩の泊る所もわかるまい。
だが、その、今晩のねぐらはさほど心配するがものはない。この少年は、山に寝て獣を友とする方が、人里に住むよりは遥かに得意なはずだから――