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だいぼさつとうげ

大菩薩峠10

中里 介山

線上閱讀中里 介山《大菩薩峠10(だいぼさつとうげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 285,635 字 · 558 頁

青空文庫

与八は、お茶をついで、七兵衛の前に差出してから、改めて問題の絵馬を無雑作に取り上げて、

「こりゃ、お松さんが持って来たものなんですが、どこから持って来たか、わしは知らねえが、あんまり縁起でもねえ額だから、おっぺしょって、火の中へくべってしまおうと思っていたところです」

といって与八は、いったん自分が二つに踏み割ってしまった絵馬を、もう一ぺん細かくさいて、それを眼の前の炉の火に投げ込もうとしますから、七兵衛があわててその手を押えました。

「滅多なことをしなさんな、それでも絵馬となりゃ、納める人は丹念して納めたに違えねえ、まあお見せなさい」

七兵衛は与八の手から、二つに裂けた絵馬を受取って、その怪我をいたわるような手つきであしらいながら、裏と表を一ぺん通りジロリと見渡してから、膝の下へ置き、

「誰がこの絵馬を持って来たんだって?」

「お松さんが持って来ました」

「お松さんが、どこから持って来たの?」

「それは知らねえ」

「ふーん」

と七兵衛は、お茶を手に取って飲みながら、首をかしげないわけにはゆきませんでした。

七兵衛は、与八のことは知っているか、いないか知らないが、お松のこの地にいることは、充分に知っているはずである。