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だいぼさつとうげ
大菩薩峠10
中里 介山
線上閱讀中里 介山《大菩薩峠10(だいぼさつとうげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 285,635 字 · 558 頁
は思います。愛というものは――慈悲と申しても同じことでございますが――火のように烈しく人を焼き、水のように深く人を溺らせるものではございません。慈悲と申しまするものは、春の日のように、また春の雨のように、平和に人を恵みうるおすものでございます。時としては、秋の霜のように、冬の暁の雪のように、人の骨身を刺すこともございましょうけれど、それは人の精神を引締めるもので、人の心を亡ぼすためではありません。愛というものは、そんなに痛快なものではないのでございます。どちらかと申せば、緩慢な、歯痒いところに慈悲が潜んでいることもございます。本当の愛というものは、急激な同化を好まずして、秩序ある忍耐を要求するものではございますまいか。一粒のお米を、自分のものとして取入れるまでに致しましても、三百六十余日の歳月を待たねばなりませぬ、そうしてその三百六十余日の歳月とても、ただ徒らに待っているわけではございません、耕し、耘り、肥料をやり、刈り取り、臼に入れ、有らん限りの人の力を用いた上に、なお人間の力ではどうすることもできない、雨、風、あらし、ひでり、その他の自然の力に信頼して、そのお助けを得ての上で、そうしてようやく一粒の米が私共の食膳にのぼるのでございます。