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だいぼさつとうげ
大菩薩峠10
中里 介山
線上閱讀中里 介山《大菩薩峠10(だいぼさつとうげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 285,635 字 · 558 頁
ところが、この四人は、その摺付木で取った火をろうそくへうつすと、そこで、悠々と絵図面をひろげて、ささやき合っているのはいいが、なかの一人は、その火で煙草をのみはじめたから、
「あ、物になっちゃあいねえ……」
七兵衛は、反りかえってしまいました。その道の者からいえば、この忍びの連中のやることは無茶だ。本当の忍びは、呼吸そのものさえ絶滅してしまわねばならぬ。煙草を吸った日には、三里先にいる動物だって逃げるではないか。
果して、一行のうちにも、多少は思慮の深いのがあって、
「君、煙草をのむことは、よした方がよかろうぜ」
と注意を与えると、
「そうか」
といって、素直にそれを揉み消して、それからは極めてひっそりと、一本のろうそくに額をあつめて、絵図面の研究をつづけているうちに、その中の一人が、また制禁を忘れて、
「失脚落チ来ル江戸ノ城、井底ノ痴蛙ハ憂慮ニ過ギ、天辺ノ大月高明ヲ欠ク……」
と、はなうたもどきにうなり出したものですから、その時に七兵衛が、
「ははあ、わかった、今時、薩摩屋敷の中で、こんな声がよく聞える、なるほどあの連中のやりそうなことだ」
と感心しました。
そうか、そんならばひとつ、こっちもいたずらをしてやれ、という気になりました。