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だいぼさつとうげ

大菩薩峠10

中里 介山

線上閱讀中里 介山《大菩薩峠10(だいぼさつとうげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 285,635 字 · 558 頁

青空文庫

「御商売は何ですか、お家は……?」

と尋ねられた時も、お雪は神妙に、

「上野原で、月見寺とお聞きになれば、すぐわかります」

もし、この場合、お雪ちゃんが女学校出のお茶ッピーで、実家が高利貸でもしていて、「わたしの家はアイスクリームよ」とでも言おうものなら、この通人は真顔になって、「それはお菓子い御商売です」としゃれたかも知れません。

こういう通人の入り込むこともまた、山の炉辺の一興でありましょう。

九

その翌日、お雪は柳の間に籠って、いつになく冴えない色をして、机に向って筆を執っている。

「弁信さん――

あたし、きょうもまた、ひとりで、無名沼まで行って来たのよ。

四方の峰から、雪が一日一日に、谷に向って強い力で圧してくる中を、毎日、悠々閑々として散歩にであるく、わたしをのんきだとは思わない……?

その実、沼まで行く道だって大抵じゃないのよ。けれども、天気さえよければ、毎日一度は、あの沼まで行って見ないと気が済まないの。それも、人にことわると留めますから、わたし一人で、ないしょで行きます。

以前にも申し上げました通り、この沼は、わたしを引きつける力が有り過ぎます。