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だいぼさつとうげ

大菩薩峠11

中里 介山

線上閱讀中里 介山《大菩薩峠11(だいぼさつとうげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 368,567 字 · 720 頁

青空文庫

よし、登ろうとする者があっても、どちらから見ても、あの通りの断崖絶壁で、手脚の着けどころが無いのでございます。そうして、じっと見ているうちに身の毛が立って、怖くなって、さすが向う見ずの山登りも、断念して帰るのだそうでございます……昔の弘法大師さえも、千足の草鞋を用意なすって、それを穿ききってもまだ登れなかったのが、あの山だそうでございます」

「なるほど、そうかも知れない……でも、今、誰か登っているようだぜ」

「御冗談でしょう、よしんば登る人がありましても、ここからそれが見えるものですか」

「ところが、この眼で見える――おれの眼はどうかしているのか知らん、ああ、今日は何もかも見え過ぎるほど、見える」

「あなたにお見えになるほどのものが、わたしに見えないはずはございますまい」

お雪は、竜之助が棒の如く立って、凝視している、その越中の剣ヶ岳の半面に向って、同じように、凝視の眼を立てました。

「見えるだろう、そら、あの頂上に」

「何も見えません」

「おかしいな、よく見てごらん、頂上に錫杖が立っている」

「え、錫杖が、あのお山の頂上に?」

「そうさ、ただ一本の錫杖が、絶頂の岩石の間に、突き立ててあるのが、お前には見えないのかなあ」