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だいぼさつとうげ

大菩薩峠11

中里 介山

線上閱讀中里 介山《大菩薩峠11(だいぼさつとうげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 368,567 字 · 720 頁

青空文庫

このやくざ者のことだから、この番附をたよりに、名所廻りでもする気になって、番附面の美しい人たちを軒別に歴訪して、見参に入ってみたいというような野心を起さないとも限らない。

そこで、今も、青物車に突き当ろうとしたことほど一心に、番附面に見惚れて歩いて来たのだが、取落して、また拾い上げた途端に、端の折れ返った表を見ると、

「次第御免」

と真中に大きく、頭書には、

「名古屋分限見立角力」

少し変だと思って、なおよく見ると、

「大関、内田忠蔵――勧進元、伊藤次郎左衛門」

おやおや、この番附は違う。

十一

その夜、山吹御殿の一間に、経机に凭れて、じっと向いの襖の紋ちらしを見入っている、大丸髷に黒の紋つきを着て、縫模様のある帯をしめた、色のあくまで白い、髪のしたたるほどに濃い、中肉のすらりとした一人の女性――美人には年は無いと言っていいかも知れないが――玄人が見れば、四十を越していると言うでしょう。

この女性が、見入っている紋ちらしの襖は、古色を帯びた金ぶすまで、その上に、紫で彩られた桔梗、それに朱でたっぷりとまるめられた蛇の目、それが比翼に散らしてあるのが、見渡す限りずっとこの一間を立てきっている。