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だいぼさつとうげ
大菩薩峠11
中里 介山
線上閱讀中里 介山《大菩薩峠11(だいぼさつとうげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 368,567 字 · 720 頁
ます。
果して、こうしていると、弁信の耳に、あらゆる雑音が聞え出しました。
聞えるのではない、起るのであります。それは非常なるあらゆる種類の雑音が、弁信の耳の中から起りました。
そうでしょう、この田舎家の存在するところは、内部から見ては、日本の国のドノ地点にあるかわからないが、通常の人がこの中に坐っていれば、それは深山幽谷の中か、そうでなければ、人里に遠い平野の中の一つ家としか思われないことであります。
この一つ家の中には、弁信その人のほかには、絶えて人間の気配のするものを容れていないと同じく、その煤けた天井には鼠の走る音もあるのではなく、その外壁のあたりに、鶏犬の声だも起らない。周囲に谷川のせせらぎすらも聞えない。軒端を渡る夜風のそよぎすら聞えないところを以て見れば、万籟死したりと感ずるのは無理もありません。
しかし、夜というものは一体に、沈静と、回顧とを本色とするものですから、普通平凡な景色も、夜の衣をかけて見ると、少なくも一世紀の昔へ返して見ることができるものですから、まして夜更け、人定まった際においては、都会の真中にあってさえ、太古の色をぼかして見せることもあるのですから、ここの深夜の弁信のいるところも、存外、人間臭いところであるかも知れません。