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だいぼさつとうげ

大菩薩峠11

中里 介山

線上閱讀中里 介山《大菩薩峠11(だいぼさつとうげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 368,567 字 · 720 頁

青空文庫

それでも逃れようとはもがきません――もう、わかりきっているのでしょう。

「物騒がしい晩だ、今晩ぐらい、物騒がしい晩はない」

と、竜之助の言うことはやはり圧迫的で、且つ独断に偏しています。

「いいえ……ちっとも騒がしいことは」

お雪は、竜之助の独断を打消そうとしたが、自分の胸の騒ぎを打消すことはできないと見えて、言葉半ばで、自分の口の中が乾きました。

「ああ、やっぱり物騒がしい、なんとなく落ちつかぬ空気だ、今晩は誰か、この白骨谷の空気を乱しに来た奴がある……」

「え……」

「誰か、この天地へ、外から入り込んだ奴がある、それが、この白骨谷の空気をかき廻して、それでこんなに騒がしい」

と竜之助が言いました。お雪は、身体と乳房の堪え難い圧迫を覚えてきました。

「いいえ、そんなことは、この静かな晩に……」

途切れ途切れに言う、お雪の口がかわいてゆくのを、やはり、どうすることもできないらしい。

「静かな晩でございますが、ね、先生、ただ一つ、おかしいことがございます」

圧迫に堪えきれぬお雪は、ついに自分の指で、乳房にかかる竜之助の手を遮るように押えて、向き直ろうとしましたが、その蒼白い面が、肩の上に迫っているのを感じて、前後から銀山で押しつけられているような心地になりました。