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だいぼさつとうげ
大菩薩峠11
中里 介山
線上閱讀中里 介山《大菩薩峠11(だいぼさつとうげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 368,567 字 · 720 頁
そうして、伝馬会所の札の辻のところまでやって来た時、不意に道庵先生の後ろから水をブッかけたものがありました。
「あっ!」
と腰を抜かして、道庵が振りむくところ、また一杯、今度はその左の方から物をも言わず、手桶に一ぱいアビせかけた者があります。
「あっ!」
と左を見返す時に、今度は右の方から、思いきって冷たい一杯の手桶の水を、ブッかけた者があります。
見るも無惨に道庵の腰が抜けて、仰天しているところで、真向からまた一杯。
「あっ!」
ほとんど道庵をして、腰を立てるどころか、息をもつかせないほどの出来事で、札の辻の真中に腰を抜かし、醜態を遺憾なく曝した道庵は、盲が壁を塗るような手つきをして、しばらくは、
「あっぷ、あっぷ」
と咽ぶほかには、為さん術を知りませんでした。
そもそも、これは何という無惨なことでありましょう。例のプロ亀やデモ倉の、苦肉を以てのたくらみ、道庵を江戸からつけ覘い、とうとうかかる下劣の手段で、闇討を決行してしまったものか、そうでなければ、先日の軽井沢の場合のように、道庵の親切が過ぎたための不慮の災難か、とにかく、こうして、前後左右から、つづけざまに水を浴びさせられた道庵は、一時、全く人心地を失い、腰が立てなくなって、陸上に溺没してしまったことですが、誰とてこれを助け起そうとする者もありません。