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だいぼさつとうげ

大菩薩峠16

中里 介山

線上閱讀中里 介山《大菩薩峠16(だいぼさつとうげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 268,946 字 · 520 頁

青空文庫

六十二

そうしているうちに、お銀様の身は、いつか大きな松林の中へ隠れてしまいましたが、また暫くあって、その松林の一方から姿を現わしたところは、不祥ながら、それは一つの卵塔場でありました。つまり、人間の生命のぬけがらを納めた墓地という安楽所の一角へ、思わずお銀様は足を踏み入れてしまったのです。

しかし、これは、ああ不吉! と言って引返すお銀様ではありません。これを突っ切ることが目的地に達するに近路だと考えれば、必ずその通りに進んで行くに相違ない。果して、お銀様はその荒涼たる墓地の中の細道を分けて進んで行くと、墓地の中に人の声がしました。いや、人の声よりも先に鍬の音がしたのです。鍬を使う人があって、それがカチリカチリと小石に当って土をほごす音が、一層その場の情景を陰惨なものにしましたけれど、情景そのものよりもお銀様は、鍬の音と、その音をさせる主との何者であるかに眼を放ちました。

薄暗い墓地の中ほどに、一人の男が半身を土に没して、しきりに大地を掘っている。大袈裟に言えば、地球の一部分を破壊しているのです。それが当然、墓地の領土の中である以上は、無意味に大地を破壊しているわけでもなし、また耕作のために開墾しているわけでもありません。