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だいぼさつとうげ

大菩薩峠16

中里 介山

線上閱讀中里 介山《大菩薩峠16(だいぼさつとうげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 268,946 字 · 520 頁

青空文庫

銀の小さなお玉杓子を取り上げて、これをつつきながら、前席の会話を聞きました。

七十三

ところで、前の会話の二人も同じように、新たに運ばれたホヤホヤと烟の立つ肉をつつきながら、例の士分の方のが言いました、

「いったい、その金はどういう性質の金なのだ」

と駄目を押すと、大商人らしいのが、

「それは、御説明申し上げないでも、御安心してお使い下すっておさしつかえございませんが、ここで申し上げても、土佐までは聞えまいと存じますから」

と答えました。秘密ではあるが、ここで言ったことが土佐までは聞えまい、土佐という地名を神尾が危うく聞き留めて、ははあ、しからばこの二人は土佐にゆかりがあるのだ、土佐は山内だ、山内の当主は容堂といって、なかなかどうらく大名だそうだが、なあに、大名であろうと何であろうと、田舎者は田舎者だ、遊び方が泥臭い――というような冷嘲気分が、この場合の神尾の腹の中で頭をもたげたのですが、何しても今の使用御勝手の七万両のいきさつだけは聞洩らしができない。なにも自分の懐ろをあたためる金でないことはわかりきっているが、自分のふところが冷えているからといって、温かい話が毒になるというわけではない。