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だいぼさつとうげ
大菩薩峠16
中里 介山
線上閱讀中里 介山《大菩薩峠16(だいぼさつとうげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 268,946 字 · 520 頁
そこへ伊太夫がたずねて来たものですから、与八も一刀三礼のことを休んで、そうして、
「旦那様、おいでなさいまし」
と言って、伊太夫を招じて炉辺へ来ました。伊太夫の調子によって、何かそれは、自分に相談事があって、懇ろに話をしたいために来られたのだということが、直ぐにわかったものですから、座を立ったのです。
そこで、炉辺で茶を煎じながら、伊太夫の話し出すのを聞いていると、
「与八さん、わしは少し急に思い立って、旅をして来たいと思うのだが、その間、お前さんに頼みたいのは、本家の方へ来て留守番をしてもらいたいのだが」
「おや、そうでございますか、旅にお出かけなさるんでございますか、お江戸の方へでもおいでなさるんでございますか」
と与八が念を押しました。旅と切出す以上は、一晩泊りや二晩泊りの意味でないことはわかっているが、せいぜい江戸出府、ほぼ四十里ばかり――と与八の頭に来たものですから、そのつもりで念を押したのですが、伊太夫は頭を振って、
「いや、そうではない、もう少々遠方へ行ってみたいのだ。実は、娘がな、あの持余し者が上方見物に出かけている、そのあとを追いかけるわけではないが、わしも一度、西国を廻って来たいとは心がけていたのだが、ついどうしても出かけられないでこれまで来ている。