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だいぼさつとうげ

大菩薩峠16

中里 介山

線上閱讀中里 介山《大菩薩峠16(だいぼさつとうげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 268,946 字 · 520 頁

青空文庫

「この辺で、ゆっくり一休みしてまいりましょうよ、ねえ、宇津木さん」

後からのたりついた女の旅姿が、甘ったるい声で呼びながら、ハッハと息をきりますと、前に立ってゆっくりと歩みを運んでいた若い武士の旅姿が、頷いたまま無言でそこに立って待っています。

「ああ、せつない、負けない気で一生懸命に歩いても、やっぱりあなたにはかなわないわ」

と言って、女は秋草の老いた峠路の草原の中に、どうと腰をおろしてしまいますと、先に立って待っていた若ざむらいは、無言で、その老いたる秋草の中に立つ一基のいしぶみの面に向って、瞳を凝したままです。

「何を見詰めていらっしゃるの」

「いや――このいしぶみに何か文字がある、それを……」

「何と書いてございますか」

「左様――淋しさや何が啼いても閑古鳥」

「ほんとに、淋しい道でございますね、誰も人が通りませんわねえ」

「そうです、この道は、加賀へ抜ける本道ではあるけれど、表通りの信濃、美濃方面へ出る道と違って、淋しいです」

「淋しいのがようござんすよ、いっそ加賀の白山まで、二人っきり人目にかからない旅がしてみたいわ」

「そうもゆくまいよ」

「なんだか、あたし、後から追手がかかるようにばっかり思われてなりませんの。