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だいぼさつとうげ

大菩薩峠16

中里 介山

線上閱讀中里 介山《大菩薩峠16(だいぼさつとうげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 268,946 字 · 520 頁

青空文庫

兵馬は呆れ果てているけれど、女はいい心持に、また調子を替えて、

おちゃえ、おちゃえ

おちゃのうちの梨の木で

蝉が鳴く、何と鳴く

つまこい、つまこいと三声なく

おちゃえ、おちゃえ

あねさの腰の巾着は

びろどかな

びろどでないが、熊の皮

おちゃえ、おちゃえ

「それから今度は白川おけさ……」

と軽く手前口上をのべて、

おけさよう

おけさ正直なら

そばにもねさしょ

おけさ猫の性で

そうれ爪たてた

おけさよう

おけさ踊るなら

板の間で踊れよう

板のひびきで

そうれ

三味いらぬ

呆れて聞いているうちに、兵馬もまた、なんとなくいい心持になって行くようです。

うたはくだらない鄙唄だと思うが、女はさすがに鍛えた咽喉であり、それにきょうはいやなお客の前で、胸で泣きながら口で浮つくのとちがい、なんだか心に嬉しいものが溢れて、全く商売気抜きで、思う存分うたってのけられるのが嬉しくてたまらないものらしい。だから声もはずむし、気は加速度に浮き立ってとめどがない。

そこで、おぞましくも兵馬なるものが、今はなんだか自分も浮き浮きして、女の唄の中に溶かし込まれて行くようでもあり、その唄が終るのが惜しいような気もして、もっと、もっと――と所望してみたいような気になっていると、