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だいぼさつとうげ

大菩薩峠16

中里 介山

線上閱讀中里 介山《大菩薩峠16(だいぼさつとうげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 268,946 字 · 520 頁

青空文庫

お雪ちゃんは、一生懸命でお芋の皮をむいているのであります。

その手先を、眼を据えたように、そのくせ、多少の気抜けもしているもののように、米友がしょんぼりとながめながら、膝をちょこなんと組んで、向う脛のところを抱え込むようにして坐り込んだまま、無言なのです。

「ごらんなさい、米友さん、あなたに買って来ていただいた庖丁が、こんなによく切れて――」

なるほど――お雪ちゃんの言う通り、お雪ちゃんは今、芋の皮をむくにしても、新しい卸し立ての庖丁を使っているところであります。

「そうかなあ」

と、米友が気のない返事をしました。気のない返事をしても、気の抜けたという意味ではなく、心そこにあらずして返答だけをしたものですから、なんとなく気のないように聞えるだけのものです。

「ごらんなさい、今晩は、座敷うちだってこんなに明るいじゃありませんか、何から何まで新しいものずくめで、まるでお嫁さんにでも……」

と言って、庖丁の手を休めてお雪ちゃんが今更のように、この室内を見廻したものです。

「うむ――」

と言って、米友は相変らず気のない返事をして、お雪ちゃんへの義理に、うつらうつらとこの室内を見廻したものです。