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だいぼさつとうげ
大菩薩峠19
中里 介山
線上閱讀中里 介山《大菩薩峠19(だいぼさつとうげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 319,771 字 · 617 頁
中堂寺の町筋へ来ると、その晩は残んの月が鮮かでありました。が、天地は屋の棟が下るほどの熟睡の境から、まだ覚めきってはいない。一貫町から松原通りへ出るあたりの町角に、またちょっと立ちどまって、仔細らしく思案の頭をひねっている時、後ろからこっそりと忍び寄った、別にまた一つの物影がありました。
「へえ――お淋しくっていらっしゃいましょう」
とイヤに含み声で、前なる落し差しにこう言いかけたので、立ちどまった前の爛酔の客が、黙ってこちらをかえり見る形だけをしました。
「誰だ」
「へえ――お一人でお帰りでは、さだめてお淋しくっていらっしゃいましょうから、お宿もとまでお送り申し上げようと存じまして」
前なる人から誰何されたので、後ろなる忍び足が直ちに答えました。
「別に、送ってもらわんでもいいが」
「いいえ、その、頼まれたんでございましてな、あなた様をお宿所までお送り申し上げまするように、実は頼まれたんでございまして」
「誰が頼んだ」
「わっしは、島原の地廻りの者なんでございますが、角屋さんの方から、たった今、これこれのお客様がお帰りになるから、おそそうのないようにお宿もとまでお送り申せと、こう言いつけられたものでござんすから、それで、おあとを慕って……」