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だいぼさつとうげ
大菩薩峠19
中里 介山
線上閱讀中里 介山《大菩薩峠19(だいぼさつとうげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 319,771 字 · 617 頁
迷うよ、仏でも迷うのは無理がないなあ」
斎藤一が、二たび、三たび浩歎して、続いて物語るよう、
「君、実際あの女は、仏を迷わした女なんだが、いいか、まあ、さしさわりのないその辺の京都名代の大寺の住職に毒水禅師というのがあったと思い給え、これは近代の名宗匠で、会下に掛錫する幾万の雲衲を猫の子扱い、機鋒辛辣にして行持綿密、その門下には天下知名の豪傑が群がって来る、その大和尚がとうとう君、あの女にやられてしまったんだぜ」
「いったい何者なのだ、処女か、玄人か、商売人か――」
「何者でもない、単にその寺の門番の娘に過ぎないのだ。門番といっても、もとはしかるべきさむらいなんだそうだ。ところで、その毒水禅師というのが、修行者の間には悪辣なる大羅漢だが、一般の善男善女の前には生仏と渇仰される生仏だから、仏の一種に相違あるまい、その仏を迷わせて地獄に堕したのが、今のあの手弱女だ。と言えば、今の女が相当の妖婦ででもあって、手腕にかけて禅師を迷わしたものでもあるかに受取れるが、事実は、妖婦でも淫婦でもなんでもない、尋常の門番の、尋常の娘で、ただ、世間並みよりは容貌が美しかったというに止まる、それを七十を越した禅師が、ものにしてしまったのだ、どうした間違いか、七十を越した禅師がむりやりにその蕾の花を落花狼藉とやらかしたんだ。