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だいぼさつとうげ
大菩薩峠2
中里 介山
線上閱讀中里 介山《大菩薩峠2(だいぼさつとうげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 195,601 字 · 387 頁
あの人相書のことを忘れていたのは、いま水につかっていた間ぐらいのものです。
その、背丈、恰好、肩つきや、身の聳えを見て、俄然として醒め来ったお豊の眼に展開さるるは机竜之助。いや、机竜之助の名は知らない、その変名の吉田竜太郎で、頭蓋の上から踵の下まで貫くほどに覚えている。
お豊は、二足三足、小走りにして、追いかけたくらいでしたが、
「もし――」
「ナニ……」
先へ行く白衣の人は、お豊に呼びかけられて、すっくと立ってしまいました。
「あの、あなた様は……」
お豊は、白衣の人の突いた杖にすがるほどに近寄って、下から笠の中をのぞき込むくらいに見ましたが、
「護摩壇の修験者様ではござりませぬか」
吉田とも竜太郎ともたずねてみなかったのは、もう一ぺん、声音を聞いてみたかったからです。
「いいや、修験者ではない」
もう充分である、修験者でなくてもよい、誰でなくても、その声の持主であればよいのである。
「それでは、あの吉田様……」
「吉田?」
かぶっていた笠がこころもち揺ぎます。
「竜太郎様――」
「竜太郎?」
「あの三輪の植田丹後守様においでになった――」
「三輪の植田丹後守?」
「間違いはござんすまい」