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だいぼさつとうげ

大菩薩峠3

中里 介山

線上閱讀中里 介山《大菩薩峠3(だいぼさつとうげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 214,131 字 · 423 頁

青空文庫

「お師匠様、それについては一つのお願いがございますが、どうかお聞入れなすっていただきとうございます」

「改まってお願いというのは、どんなことでしょう、言ってごらん」

「お暇乞いを致さずにお邸を出ましたのは、わたしの重い罪でございますから、何卒もう一ぺん、神尾の殿様へ御奉公にお出し下さいまし、そうして一生懸命に御奉公を仕直して、お師匠様の御恩報じを致したいと存じまする」

「なるほど」

お絹は本気になってなるほどと言いました。それはお松の心があんまり正直だから、多少動かされたのであります。

「けれどもね」

ややしばらく感心していたお絹は、けれどもという言葉を挿んでこう言いました。

「お前はまだ知るまいが、神尾様も昔の神尾様ではないのだよ、今はお江戸にはおいでにならないのですよ」

「あの、甲府の方へお役替えになったそうでございますね」

「まあ、よく知っている……」

お絹の眼には驚きの色がありました。

「甲府のような山の中へおいでになりましては、何かにつけて御不自由でございましょうから、できますならば、お傍にいて相当の御用を勤めてお上げ申したいと存じまする」

前にはいやがって逃げ出した神尾の殿様のところへ、今度は進んで行こうと言い出したのは、それだけ苦労をして来たききめだろうと思いました。