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だいぼさつとうげ
大菩薩峠3
中里 介山
線上閱讀中里 介山《大菩薩峠3(だいぼさつとうげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 214,131 字 · 423 頁
峠に軍勢を上せたことは、まず近代にはないようである。小田原北条の一族、左衛門太夫氏勝が八千余騎でここに陣取って足軽を駒飼まで進めたこと、これが近ごろの記録であるようじゃ」
「よくお調べでござるな」
「それから昨夜、土地の人に就いて聞けば、山に何か異変が起る時は、この杉が唸るということじゃ」
「杉が唸るというのも、おかしなことであるけれど、風でも吹けばこれほどの大木ゆえ、じっとして黙ってはいまい」
「それから時々、この杉の頂辺へ天狗が来て巣を食い、おりおり下界から人を浚って来てこの杉の枝へ突っかけて置くということじゃ」
「ははあ、天狗が留るか。なるほど、木もこのくらい大きくなれば、いかさま天狗が住めそうじゃ。それといえば、昨夜あの婦人、あれがもしやその天狗に浚われたのではないか」
「なるほど、よいところへこじつけたものだ。或いはその天狗がまだ一人二人の婦人を浚って、この杉の枝へ掛けて置くやも知れぬ、よく調べてみるがよい」
「しかし……また婦人の挙動は、あれは考えものだな」
杉の考証と伝説は転じて、昨夜のお絹の挙動及びその行方のことになりました。
お絹が一切を語らなかったから、これらの人々も何と判断のつけようがなく、結局この矢立の杉あたりに棲む天狗の仕業という里人の迷信を打消しもせずに出て来たものでありました。