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だいぼさつとうげ
大菩薩峠7
中里 介山
線上閱讀中里 介山《大菩薩峠7(だいぼさつとうげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 242,044 字 · 477 頁
「ナニ!」
まだがんがんとして、何が何だかわからないで、居たり、立ったりしていると、程遠からぬ裏の物置にいたお雪と久助との地獄の耳にそれが届きました。
「おや?」
久助の胸に固くなっていたお雪が、まず聞き耳を立てると、久助も、
「あの声は?」
といいました。その時、表で第三度目の戸をたたく音――
「誰もいないか、久助どの、お雪ちゃん」
それでまさしく合点がゆくと共に、二人は重しにかけられた千貫の石が、急にハネのけられた気持がしました。
「先生が戻って来ましたよ」
「たしかに、そうでしたよ」
二人が、はじめて立ち上ると、その時、またも表でホトホト叩き、
「ともかくも、ここをあけて下さい」
久助とお雪とは表口へ走り出しました。島原遠征の鉄砲が、漸く手の上に納まったのもこの時であります。土下座をきった駕籠屋、馬方が、生気を吹き返したのもこの時で、
「誰だい」
「そこへ来たのは誰だい」
お雪が早くも戸の傍へ立って、
「先生ですか!」
「ああ、いま戻りました」
戻ったというのは、地獄から戻ったのか。その声は、たしかに地獄から響いて来たもののような声です。そうでなければ、自分たちが地獄から解放されたような心持で、従って、外なる人の言葉が、まだ地獄の底に救われない人の声のように聞きなされるのでしょう。