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だいぼさつとうげ

大菩薩峠7

中里 介山

線上閱讀中里 介山《大菩薩峠7(だいぼさつとうげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 242,044 字 · 477 頁

青空文庫

「どなたでござる」

「駒井だ」

「ええ、殿様でございましたか?」

一学は倉皇として、

「ただいま、表御門をおあけ申しますから……」

絶えて久しい主人が、こうして夜陰にブラリと尋ねて来たものですから、一学も最初は妖怪変化ではないかとさえ驚きあやしみ、且つ喜びました。

飛ぶが如く表門へ駈け出して、門を開き、主人を案内はしたが、それを堂々と表玄関へとおすことができず、自分が今まで内職をしていた長屋の中へ、ひとまずお連れ申さねばならぬ運命のほどを悲しみました。

駒井甚三郎は、さのみ悲しむ色もなく打通って、

「勉強しているな」

「はい、おかげをもちまして」

一学は何ともつかず返事をして、取って置きの敷革を出して主人にすすめる。

「殿様、これは夢ではございますまいかと、私は存じまするが、夢ならば、さめないうちにおたずね申し上げなければなりませぬ。ただいままで殿様には、どちらにおいであそばしました、そうして何故に、ただいままでお便りを下さいませんでしたか」

一学は両手をついて、主人にたずねました。

「便りをしないことは悪かったが、便りをしないことが自他のためであったのだ。それはそうと変ることはなかったか……と尋ぬるも異なものだが……」