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おおさかをあるく
大阪を歩く
直木 三十五
線上閱讀直木 三十五《大阪を歩く(おおさかをあるく)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 32,964 字 · 65 頁
大阪の女が、どんなに頑張ろうとも、芝居はだんだん椅子風になって、食事と別になる事は明らかである。そして、それらの遅速が文化の遅速である。
私は、私の母の如く年に一度しか、芝居へ行かぬ女でさえ、中村鴈治郎を、自分の鴈治郎のように語るのを、知っていた。鴈治郎の声が、何うあろうと、とにかく大阪の俳優鴈治郎が、芝居をしていたら、それでいいのである。そして、いつまででも、鴈治郎で、他に、誰も出て来なくても、十分満足している。
「一寸、やりよるがな、ひいきにしたろか」と、云えば「新声劇」は、十分に、人気を保つことができる。「何や、判れへん。おもろうないな」と、云ったら、何んないい劇団でも、がらがらになる。
大阪の芝居見人種には、この二種が一番多いらしい。だから、いろいろの新劇団が、できるには一番いい所である。目先きさえ見えたなら、少々の事は、無批判で通してくれる。そして、十分、よくなってから、東京へ出てくる。東京で、育つ種類とは、種類がちがう。
ひいきの役者さえ出ておれば、それでいい、旧大阪人と、そういう芝居に慣らされて、その人々以下の観賞眼の、新らしい大阪人と――その二つである。