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たいへいようまじょう

太平洋魔城

海野 十三

線上閱讀海野 十三《太平洋魔城(たいへいようまじょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 93,147 字 · 187 頁

青空文庫

ことに、鼻から上唇にかけて、大きな膏薬がはりつけてあり、そのせいかたいへん低い鼻声しか出せない。太刀川は、ケント夫人が皮膚病をわずらっているのであろうと思った。お金がうんとあっても、病気に悩んでいるらしいこの老夫人に同情の心をもった。

「やや、なんだ、鉄棒かとおもったら、この安もののステッキが、俺の向脛をぐりぐりぶったたいていたんだ。けしからんステッキだ」

酔っ払いのリキーが、またどなりだした。そのとたんに、太刀川がついていたステッキが、あっという間につよい力でもぎとられた。リキーは、それを頭上にさしあげた。

「このステッキは、誰のか。俺の向脛を折ろうとしたこのステッキは、一体誰のか。さあ名乗らねえと、あとで見つけて、素っ首をへし折るぞ。ええい、腹が立つ、この無礼なステッキを海のなかへ叩きこんでしまえ」

リキーは乱暴にも、ステッキを海中へ投げこもうとした。

「待て。それは僕のステッキです」

太刀川は、さっきから、そのことに気がついていたが、どうしたものかと考え中であった。大任を持つ身の、こんな小さなことで喧嘩したくはなかったが、原大佐から親しくさずけられた貴重なステッキを奪われ、海中になげこまれたのではもう我慢ができない。