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かのうせいのぶんがく
夫婦善哉
織田 作之助
線上閱讀織田 作之助《夫婦善哉(かのうせいのぶんがく)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 47,834 字 · 94 頁
おれはそんなお前が急にいやになって来たのだ――と。
それまでおれは、お前の売名行為を薬を売るための宣伝とばかし思って、黙ってみていたのだが、どうやらそうではなくなったのに、憂鬱になってしまったのだ。変に国士を気取ったりして、むしろ滑稽だった。国士という言葉が泣く。
つまりは、お前は何としても名誉がほしかったのだ。成金の縁者ごのみというが、金のつぎの野心は名誉と昔から相場はきまっている。そう思えば、べつだん不思議でもないわけだが、しかし、そうはっきりと眼の前で見せつけられると、やはりたまらないものだ。
ことに、お前のやつは、何かをびくびく怖れての所業だ。だから、一層おれはいやだった。成金は金があるというだけで、十分だ。それ以上、なにを望むというのか。金を儲けたという、すさまじい重圧の下で、じっと我慢してりゃ良いのだ。じたばたする必要はないのだ。金があって苦しければ、そっくり国家へ献金すれば良いのだ。じたばたするのは、臆病だ。――おれはもう黙って見ていられなかった。いや、ますます黙したのだ。
おれはお前を金持ちにしてやるために、随分かげになり、日向になり権謀術策も用いて来たが、その目的も達した以上、もはやおれの出る幕ではない、と思ったのだ。