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しっさくき

失策記

豊島 与志雄

線上閱讀豊島 与志雄《失策記(しっさくき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 4,228 字 · 9 頁

青空文庫

」などと書きちらして怡んでいる。――その謡曲十五徳の額面を一つ、私は知人の求めによって、揮毫依頼に行ったのである。

伯母が出て来て、私を座敷に案内し、茶菓を出してくれ、何かと消息を尋ねてくれる。この伯母は至ってやさしくにこやかなのだが、やがて、襖の彼方からエヘンと一つ咳払いして、伯父が姿を現わすと、私も固くならざるを得ない。朱塗りの長卓の前に伯父は、肩をおとし腹に力をいれて正坐しているのだが、私にはその長卓がどうも低すぎる。眼をそらすと、縁側に小さい万年青の鉢が置いてある。私は立って行ってその万年青をほめ、戻ってくると、どうしたことか、いきなり胡坐をかいて云った、「伯父さん、どうぞお楽に!」「ええまあわたしは……。」とかなんとか伯父が云ってるのも知らん顔で、煙草をふかしたのである。

――そのことが、あとで笑い話になり、他家に行ってそこの主人にどうぞお楽に――でもあるまいと、私はすっかり無作法者にされてしまった。

二

或る時私は、つまらないことから多額の負債を荷った。そのうち、最も悪質なのが三千円ほどあって、利子が月八分にも当るのである。