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ぶぎょうとにんそうがく
奉行と人相学
菊池 寛
線上閱讀菊池 寛《奉行と人相学(ぶぎょうとにんそうがく)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 8,053 字 · 17 頁
大岡越前守は、江戸町奉行になってから一、二年経った頃、人相と云うことに興味を持ち始めた。
それは、月番のときは、大抵毎日のように、咎人の顔を見ているために、自然その人間の容貌とその人間の性格とを、比較して考えるようになったのである。
が、大抵の場合、人殺しや、強盗は凶悪な面構えをしているし、かたりやすりは、ずるそうな顔をしている。
が、折々愚直そのものと思われるような男がずぶとい悪人であったり、虫も殺さないように見える美人が、亭主を毒殺などしている。そうして見ると、愚直そのものと思われる顔にも、どこかに根ぶとい狡猾性がひそんでいなければならないし、虫も殺さないような美しさの中にも、人に面を背けさせるような残忍性が、ひそんでいなければならない筈である。
そう云うものを見つけるには、人相学と云ったようなものを、研究しなければならないのではないかと考えていた。
丁度その頃、彼は旗本の士である山中左膳と知合になった。左膳は当時の大儒室鳩巣の門下で、代講までするほどの高弟であったが、中途から易学に凝り出し、易、人相、手相などを研究していた。看板こそかけていないが、内々では易や手相、人相などの依頼に応じているとの噂である。