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ぶぎょうとにんそうがく
奉行と人相学
菊池 寛
線上閱讀菊池 寛《奉行と人相学(ぶぎょうとにんそうがく)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 8,053 字 · 17 頁
窃盗が、十件あまりと、スリが五、六件である。が、一件の金額が十両以上のものはなかった。その頃の成文法及び慣習法に依ると、その人間の盗んだ金額が、総額がいくらに上ろうと、一件の金額が、十両に上らない場合は、死罪を免れることになっている。十両と云えば、戦争前の金額にすれば、千円近いのである。現在の金にすれば、十万円にも上るだろう。江戸の初には、一両で米が四石であった。十両で、四十石である。大岡越前時代でも、二十石位である。忠臣蔵の連中の中で、半分以上は七両五人扶持と云った人々である。七両十両などと云うのは、相当な武士の年俸である。ある足軽が、五両の金に困って死ぬとき、
死んだらばたつた五両と云ふならむ
生きてゐたらば二分もかすまい
と云う辞世の歌を作っている。もっとも、二分と云っても、その頃吉原の一流のおいらんの揚代が二分であった。だから、おいそれとは、誰もかしてくれないわけである。
だから、十両と云うのは、大金である。むかしの苛酷な刑法が十両以上盗んだものは、斬に処したわけである。尤も、戦国時代には、一銭斬りと云って、永楽銭一銭を盗むと斬ってしまったのである。