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ちぎりきぬ
契りきぬ
山本 周五郎
線上閱讀山本 周五郎《契りきぬ(ちぎりきぬ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 32,757 字 · 66 頁
すぐ側を太田川がながれているのでそう呼ばれるのだろうが、柳町、松岡町などというほかの花街の者とは区別されて、着物も髪かたちも一定の規格があり、町の子供たちなどにも、――河岸っぷちの後家ということはひと眼でみわけがつくし、すぐ悪口の種にされた。
『後家』という代名詞はほかの土地にもあるようだが、ここではずっとむかし、妻が良人の死後に不倫なことをしたばあい、それが法に触れるとそこへ落されて、娼婦にされたのが起りだという。事実はどうかわからないけれども、城下町の人たち、なかでも婦人たちは今でも固くそう信じていて、そこにいる女たちを特に卑しくみていることは確かであった。……しかしふしぎなことには、そこは柳町や松岡町よりも繁昌するばかりでなく、遊び客も職人や日雇取り人足どものほかに、大きな商家の息子や武家の者などが、こういうところあ本当の遊蕩の味があるなどといっては、かなりしげしげかよって来た。
おなつは、この『みよし』へ来て百日あまりになる。
彼女はこの国の隣りにある小さな藩の足軽の子であった。ここでは太田川というその川が、おなつの故郷では荒井川といい、少し大雨が続くと氾濫して、田畑を埋め城下町まで浸してしまう。